「私も行くから!」


「ダメだ! ………絶対にダメだ!」


「……お願い。行かせて」



互いに 一歩も退かない。

皆に気づかれぬように、小声で言い争う姿は 何とも滑稽だ。



ひたすら絞り出すような悲痛な小声で、ナナは訴え続けた。


しかし、喉の駆使が祟り 声は小さくなる一方。

どうしても分かってもらえない。

そんな 苛立ちに堪えられず、遂には声を張り上げてしまった。




「止めても 行くから!
何と言われようと、行かないわけにはいかない! 絶対に………!」


話終わる前に、イブキに手で口を塞がれてしまった。



しかし、生まれて初めて 人に逆らった瞬間だった。


なぜか、私の中で 何かが弾けたような、そんな錯覚に捕らわれた。



止めどなく溢れていた涙も止まり、激しく震えていた体も 強い意志と共に、消え去っていた。



突然 起こった、私の変化に驚きながらも、凝視する2人。



それでも私は、目で 強く訴え続けた。