「じゃっ! またなー!」


「ちょっ ちょっと待て!」



やっぱり慌てた!
そんなに獲物を逃がしたくないのか!って思った。



あわてて、窓を飛び越え走り寄って来るのが、見なくても 分かった。



「待てよ! 忘れもんだ!」


……ん? 忘れもん?



振り返ると、何かを 俺に渡そうとしている。



「なんだ? それ?」



「これ! お前んじゃないだろ。
あの子のじゃね? 落ちてたぞ!」



それは、古びた御守り袋だった。



「あっ それ!」




全体が 赤黒い色で、それは 染まっていた。


それは、いつもナナが 首からさげている 印象的な御守りだった。



一度だけ 気になって聞いたことがある。


愛おしく抱きしめながら、大事な 母の形見だって 言ってたっけ。




俺は、それをハヤトから受け取った。


手にすると、すぐに異変に気がついた。


ただでさえ、古くヨレヨレなのに、それは、無惨な姿に 変貌してしまっていたのだ。