それは、ある種の生物を 媒介とし、人間に感染する 驚異的なウイルスだった。
S205型ウイルスは、爆発的 殺傷能力に優れ、人間だけを 死に陥れた。
感染した者は、その瞬間から発病。
ウイルスは、真っ先に 筋肉組織に入り込み、急激な 膨張変異を引き起こした。
激しい筋肉の拡大に、周りの 皮膚や血管、そして 内臓といった組織が それに耐えられるはずもなく
ブチブチと 鈍い音をたてながら、次々に 張り裂ける苦痛。
全身から、血が噴き出すさまを感じながら、
それでも、痛みや 苦しみから 逃れることもできずに、味わい続けなくてはならない。
やがて、脳内から 特殊な分泌伝達が起こり、精神が放たれる。
わずか、三時間という早さだが、
感染者は 永遠とも思えるような 苦痛を味わいながら
………息絶えるのだ。
あの時…
私は、助けを求め 悲痛な声をあげる 大事な家族を 前に……。
