幼なじみだから、彼のことは沢山知ってるし、憎めない性格にも 好感を持っている。


好きか嫌いかって聞かれたら、好きって答えるだろう。

でも、それは恋愛感情じゃない。

もし 男と女の関係に、親友が成り立つのなら、まさに それのような気がした。




「ナナ。お前の過去って最悪だけど、どこかでケリつけねーと、マズくね?」


突然の質問に、私は答えられなかった。




「あっ!悪りい!俺なんかが言うことじゃねーか。」


頭を ポリポリかきながら、彼は続けた。



「嫌われんの覚悟で言うけど、なんか お前。………可哀想で見てらんねんだよ」


………。


「そりゃさー 確かに分かるよ。
お前の……その 生い立ちがさっ、悲惨すぎるってことも
もし俺が、お前だったら耐えらんねーかもしんないけどさ。
だけどな………ん!ナナ?」




「うるさい! 私だって………頭の中では理解してるよ。
他のみんなだって、辛い過去なのに………
でも我慢して あそこに行ったってことも 分かってる!
私だけが 逃げたことも
自分がどれだけ卑怯で弱いか
全部 分かってるよ!
でも……
仕方ないじゃない。
忘れられないんだから!」




彼の話を 最後まで聞くことが出来なかった。


すべて分かっていた……
気づいてはいても
その気持ちから……
逃れられない自分に、苛立っていたのは事実。


私は、またしても卑怯なことに、
イブキの優しさにつけ込み
彼に 自分のもろさを 叩きつけてしまった。


…………最低の女だ。



同時に、ブアッ と目頭が熱くなり、涙と共に 体が震えだした。