料理好きだから と言う理由だけで、ナナは毎日 みんなの食事を作っていた。
しかし 今朝は、風邪という嘘をついた為に、ナナは調理場へは行けなかったのだ。
仕方がなく、料理が まったく出来ないと分かっていながら、他の女子に任せるしかなかったのだ。
当然だが、恐ろしくも 不気味な物が 出来上がったのは 言うまでもない。
「はは………はっ」
ナナは、苦笑いするしかなかった。
「そういや〜! 赤紅の奴、お前んとこ 行った?」
「うん。夕方 来たよ!」
赤紅とは、院長先生のアダ名だ。
勿論 院長本人は、自分にアダ名がついている事なんて 微塵も知らないだろう。
院長が毎日、良かれと思い付けている、真っ赤な口紅。
その唇で 生徒を叱る為、一部の生徒達が憎しみを込め、そう呼ぶようになったらしい。
やがて、いつの間にか 全体に広がり、当たり前のように使うようになった。
それが、赤紅の由来だ。
「赤紅の奴、なんか 言ってきたか?」
「ううん。大丈夫だったよ。
ただ 様子を見に来ただけみたい」
「そっか。あれだな!
俺の演技も まんざらじゃねーってことだよな!」
笑いながら、自分の上着を サッと脱ぐと、それを 私にかけた。
風に当たり、少し冷え始めていた体に、フワッと イブキの温もりが 伝わった。
その大きな上着は、私のむき出しの足まで 覆ってくれた。
「あっ ありがと。でも…イブキが冷えちゃうから」
「女は、体を冷やすもんじゃねーよ! 俺は男だから平気だ。 気にすんな」
さすが イブキ。
昔から、さり気ない気遣いを 難なくこなす。
その彼が、学園中の女の子から好かれ、プレイボーイである事も納得がいく。
