「何の……事かしら?」




「今、先生が 持ってたやつ……」



そう言いながら、院長の手元に 視線を移した。




「……あれ?」



有るはずの物が 無い。

院長の手のひらを 何度も触りながら、どこかに 落ちてないか 辺りをキョロキョロ見回している。



いかにも 幼子らしい仕草だ。



「どうしたの? ほら 先生、何も持ってないわよ」



何食わぬ顔で、両手を広げて見せた。



「……でも………っ。」



腑に落ちないのも 当然だ。


実際、例の物を 確かに見ていたのだから……


しかし、院長は認めない………



嘘なのか 本当なのか? 頭の中が ゴチャゴチャになってしまった。



遂には 訳が分からなくなって、その場で モジモジしだすはめに。





院長は 焦りを感じた。




予想以上に長い………この状況。



遠くにいる生徒達も、少なからず、こちらに 興味を示し始めた。