──その頃───
ここは ゼスラ帝国の北部地方。
最も 大規模な都市だ。
すべての 地方都市を含めれば、世界トップレベルの広さと経済力を誇る 国である。
それだけに、この国の境界線は、虫一匹 通さぬほどの、厳重な警備体制がとられ、他の国から 恐れられていると言っても過言ではない。
とは言っても、遥か昔 陸地が海に沈み、再び顔を現した 約100年前の なごりを多く残した場所なだけに、他国からの 興味は計り知れない。
そして、ここ北部地方は 最先端の情報が行き交う、最も栄えている場所なのである。
そこに建つ、この 国立歴史博物館は、特別な存在意味を持っていた。
建物は大きく、かなり古いのが特徴だ。
一階部分は、絵画展示場となっており、
二階には、昔の書簡を扱う 図書館となっている。
そして、もっとも 重要な博物館は、三階にある。
勿論、階を上がるごとに、そのセキュリティーは物々しさを増していくのだが。
珍しいことに、今日の博物館内は 活気に包まれていた。
「本日は、当 国立博物館にお越し頂き、誠に有り難うございます。ご案内を ご希望のお客様は 受付にてたわまりますので ご遠慮なくお申し付けくださいませ。」
ざわめきに、かき消されそうな 館内アナウンス。
そこへ、スラリと長い足を自慢するかのごとく
タイトなミニスカートを決め込んだ 長身の女性が現れた。
高いヒールで、さっそうと歩く姿は、どことなく気品さえ感じられるほどだ。
「皆さ〜ん! 集合して下さ〜い」
バラバラに散らばる生徒達に、呼びかける大きな声。
それは、館内中に響き渡るほどに澄みきった、かん高い声だった。
長い髪の毛の先を、くるりとS字にえがき、ふんわりとした ウェーブがなびくたびに、大人の色気を 漂わせている。
やがて……
