何やら 突き刺さるような、強い違和感を覚えたイブキ。
…………ん ?!
走り際に、何かを見つけたようだ。
薄暗い為、それが何なのかは よく見えなかった。
足を止めると 目をしかめ、そこに 意識を集中させた。
そして、見えてきたもの。
それは、椅子に腰掛けた 女の子。
「うぉっ!!」
顔は 小さく真っ白で、それを 引き立たせるような、真っ黒な 長い髪。
激しく乱れた髪の隙間から、血走った 大きな瞳が覗いていた。
「ぎゃ────っ !!」
見ては ならぬものを、見てしまったのでは という恐怖。
その 強烈な衝撃に、体は大きく 飛び跳ねた。
着地する足に 力が入るはずもなく、バランスを崩した体は
近くにあったテーブルを突き飛ばし 床に叩きつけられた。
互いに 目を合わせたまま、私は スローモーションを見るかのように、彼の 情けない姿を、一部始終 見届けてしまったのだ。
痛みに堪えながら、イブキは 私を睨んだ。
どうやらと言うより、完全に バレてしまったみたい。
「ふざけんなよ! ナナ!!
脅かしてんじゃねぇよ!」
そう怒鳴りながら、ズカズカと 詰め寄って来た。
