──えっ?! まだ…っ……
残ってたの?!
うそ……っ。
誰……っ?!
その者はゴクリと、生唾を飲み 息を殺した。
そんな中、イブキは 顔を真っ赤にして、夢中で階段を駆け降りていた。
やがて その目に、広々としたフロアが飛び込んできた。
そこは、フラワーマリア学院の一階部分。
玄関入口の横に位置し、学院生が集いの場として利用している、居間的スペースだ。
今日は全員外出の為、カーテンはすべて、閉めきられていた。
力強い太陽光が、隙間から顔を覗かせている。
室内は薄暗いものの、物の位置は把握出来た。
イブキは、何のためらいもなく、フロアの中心めがけて、一目散に突っ切ろうとした。
その姿を 遠目に見ながら 私は願った。
お願い………。
気づかないで……。
緊張のあまり 体はガチガチに硬直してしまった。