そして今、そのサイレンが 発動してしまったのだ。



信じたくはないが、その矛先は 自分達だと確信してしまった。



しかし、一度でも、このサイレンの餌食にでもなろうものなら、町中の警備兵が 一斉に襲いかかって来る。



そんな状況で、次々に襲いかかる 警備兵をかいくぐる事は、まず不可能だった。



トシだけでも……助けたい。



しかし、衰弱したトシを またトンネル内に戻す訳にもいかない。



二人は、光の全く見えない絶望感をかかえた。



まったく 何の回避にもならないと分かっていながらも、滑り台の穴へと身を隠くしかなかった。


トシを助けに来るという事は、こういう事を意味していたのだ。



しかし、覚悟をしていた事であれ、
実際に その立場にさらされるというのは、未開の万物に触れるようなものだった。


生き心地を、たっぷりと 感じながらの苦痛。
…………ゾッとした。



そんな時にでさえ、トシを守りたいという気持ちだけは 先行した。



二人は抱き合い、トシを体の中に隠した。


せめて、傷つく苦しみを 味あわせたくないという、優しさからだろう。