その音の正体を 確かめようと、しばらく耳を澄ませた。


再び、あの音が聞こえることはなかった。




「おい! ナナ。ちょっと」


外を見回っていた ハヤトが、ひどく焦りながら 呼びに来た。


急いで穴を飛び出すと、この滑り台の反対側にある穴らしき物を、覗き込んでいる、ハヤトがいた。


近くに行くと そこには、子供一人 這いながら通れる程の、細いトンネルらしきものがあった。

私達は 目を合わせ、同じ事を思っていた。


ここなら、子供が隠れるのに 都合のいい場所だ。


さっきの音は、きっとトンネル内で、トシが動いた音に違いない。


私は確信した。



まずは、ハヤトが 顔を突っ込み 呼びかけた。


「トシ……… トシ?」

返事はない。


「俺だ……ハヤト兄だ。トシ。もう、大丈夫だから いるんだろ?」



「………兄ちゃん?」



ナナにも、微かだが 確かにトシの声が聞こえた。


やっぱり いた!


良かった〜。


諦めなくて良かったと、ナナは胸を撫で下ろした。