しかし、この国の人間は こんな話を聞いても、誰一人 意義を示す者はいない。
怖くて言えないのか?
それとも、本当に それが普通だと思っているのか?
男の子は、まだ五歳にも満たない 幼子だった。
何の反応も無い事が、逆に恐怖さえ感じさせる。
ナナに限っては、そう思う自分がこそが、おかしいのではないかと、疑ってしまう時さえあった。
しかし、笑いながら 面白おかしく語る、この男達を どうしても許せない。
ベンチを離れて行く男達の、後ろ姿を見送りながら ナナは思った。
その背後から、おもっきり殴りつけて、謝らせたい。
いけない事だと、分かってはいても そんな衝動に駆られ続ける ナナだった。
「しかしなんだな。 あのガキは 運がいい」
「そうなんっすか?」
「ああ。あの時は 木刀しか使えなかったからな
でも、今なら この刀が使えんだぜ。」
「そのガキにとっちゃ、ラッキーって訳っすね」
「そうだ。 でも木刀だけでも、十分 瀕死だけどな」
