凍りつく体。
その人影は、真っ直ぐ こちらにやって来た。
警備兵だ。
どうやら、私達には気付いていないようだ。
目の前のベンチに、ドスッ と座ると、ライターに火を灯す音と共に、タバコの煙が漂う。
ハヤトとナナは、息をする鼻に虫が侵入しないように、手を当ててその場を凌いだ。
少しの身動きさえ 命取りになる状況。
くしゃみなんてしようものなら、すべて水の泡だ。
すると、遠くから人の走る音。
やがてそれは、すぐ近くまでやって来た。
「おう! ここだ。」
「先輩! すいません。遅くなりました。」
「いいって事よ」
「しかし、いいんですかね? 持ち場 離れちゃっても……」
「ああ。 実際 チェックなんてされてねぇから、問題ねぇよ」
