「隠れろ!」
ハヤトからの、鬼気迫る 一声。
とっさに体をかがめ、ハヤトの誘導に、身を任せた。
そして、道路脇ベンチの後ろに身を潜めた。
「ナナ。何があっても動くなよ! 分かったな?」
強張る体。ナナは恐怖から、すでに声が出なくなっていた。
涙目でハヤトを見つめ、うなづくしかなかった。
とっさに潜んだ茂みの中は、何とも居心地の悪い場所だった。
数々の虫が 地面を這う音がやたら耳に入った。
どれ程、沢山いるのか 見るのも恐ろしい。
汗まみれの体を好む 虫の大群が まとわりついてくる。
中でも、あちらこちらで実行される、蚊による逆襲は、まるで全身の血を吸われているかのような感覚に襲われた。
しかし、私達はそれに堪え忍いだ。
やがて、茂みの隙間から覗き見る 私達の目に、人影が飛び込んだ。
その影は、ゆっくりと こちらに向かって来た。
