ウソ★スキ

「泣くわよ!」

あたしはソラの腕を振りほどくと、ソラの方を向いた。

そして、両手を伸ばして思いきりソラの胸をどんと突いた。


「もういい! あたし、やっぱり我慢しない!」


涙を拭くと、狭いバスの白い壁に背中をぶつけたソラが、驚いた顔であたしのことを見ていて。


「……あたしだって、楽しければ笑うし、悲しければ泣くし。……嬉しすぎても、泣くんだから」


それを聞いたソラは、声を出して楽しそうに笑った。

そして、

「でもやっぱり、泣かないで?」

それでもしつこく、そう言った。


「……ソラの頑固者」

「うん、そうかも」

「……でも、あたしはソラに何て言われても、泣きたいときは泣くんだから。そう決めたんだからね」

「美夕だって頑固じゃん……」


ソラにつられてあたしも笑うと、ソラはそんなあたしをもう一度自分の方へと抱き寄せて。


「だったら、泣いてもいいけど、どこにも行かないでくれる?」

「行かないってば! あたしはここにいるって言ってるでしょ!?」


「意外と美夕ってヒステリーなんだな。……気も強いし」


ソラはあたしが何か言うたびに、いちいち可笑しそうに笑った。


「知らない! ……ちょっと、ソラ、そんなに笑わないでよ!」


「あー。俺、幸せかも」

「……え?」

「うん。……良く分からないけど、俺、今が一番幸せだ」