ウソ★スキ

ソラはあたしの手を掴んだまま、「いいから聞いて」って、話を続けた。


「俺、店に美夕が来てくれるのがホントに楽しみだった。自分でもわけわかんないんだけど、美夕といるとホッとするんだ。……でも、それだけじゃなくて……ホッとするけど、ドキドキした……」

あたしの手を握ったまま、もう片方の手を自分の胸に当てて。


「さっき、もう会えないって電話切られた途端、『そんなのありえねーだろ』って呟いてた。……あんなことがあったけど、美夕は絶対また店に来てくれるって思ってたのに、そうじゃないのか?って、めっちゃ焦って……」

ソラはひとつ深い深呼吸をしたあと、あたしの顔をじっと見た。


「美夕、聞いて? 今度会ったら絶対言おうって決めてたんだ」


そして、あたしの目を見たまま、こう言ってくれた。


「この前美夕が言った通り、昔、俺たちは何かあったんだろうし、そのことを思い出せなくて、それで美夕を悲しませて、本当に申し訳ないと思ってる。

……でも俺、あの絵が美夕だって知って、すっげー嬉しかったんだ。確かに驚いたしすぐには事情が飲み込めなかったけど……でも、これだけは間違いない。俺、あの時最初に『美夕で良かった』って思ったんだ。

俺、美夕が好きだ。

……昔のことを思い出せなくても、今、俺は美夕といたいと思う。

……だから頼む。もう、どこにも行かないで?」