「だけど、駅に着いたところまでは良かったんだけど、それからどこに行けばいいのか分からなくて。……だから駅員に調べて貰ったんだ。その町にあって、近くに本屋がある大きな駅って言ったらひとつしかないだろうってここを教えられて。……それにしても特急使って3時間って、遠すぎ……」

「……だから、もうお店には通えないって言ったのよ」

「でも、遠すぎ。……それで、駅を降りてこの辺りを探し回っていたところに、ちょうど引越トラックがここから出て来たんだよ。電話してるとき、美夕の後ろで聞こえた名前と同じ業者だったから、ここに間違いないって思ったんだ」

「……この部屋だって、どうして分かったの?」


座り込んだままの体勢で、ソラがあたしを見上げる。

「外から見てたら、カーテンをつけてる美夕を見つけた」


ソラはしんどそうなのに、笑っていた。


「あーくそっ、こんなに走ったのは久しぶりだ。明日、絶対筋肉痛だな……」

「ちょっと待って。あたし、水持ってくるね?」


「駄目。そんなのいいから、ここにいて」


そう言うとソラは、そばを離れようとしたあたしの手をぎゅっと強く握った。