──その時だった。




ドンドン! ドンドンドンドン!!




誰かが部屋のドアを激しく叩く音がした。







ここに引っ越したことは、親以外、まだ誰にも知らせていない。

だから知り合いがここを訪れることはないはずなのに。


だけど、玄関のドアを叩きながらあたしを呼ぶその声を、あたしは確かに知っていた。




「美夕!」




……どうして?

……どうして、ここに!?


この時も、やっぱりあたしの頭の中は「どうして?」いっぱいで。


嬉しさよりも、驚き。
驚きよりも、

戸惑い……


あたしがどうしていいかわからずに玄関で立ち止まっている間、その声の持ち主は休むことなくドンドン、ドンドンってドアを叩き続ける。




「美夕、そこにいるんだろ!? 返事してくれ!」




──まったく。

近所の迷惑も気にせず、こんな風に激しくドアを叩くところなんて、




キラとそっくりなんだから……





そして。

どんな顔で会えばいいのか分からなくて、とりあえず目に浮かんだ涙を拭うと、


あたしはゆっくりと部屋のドアを開けた。