「だったらもう、会えないってこと?」

「落ち着いたら一度お店に挨拶に行きたいとは思ってるけど、まだしばらく時間がかかるかな? ……それに、その頃にはもう、ソラは大学卒業して、いないかもね」

「もし美夕に会いたくなったら、俺はどうしたらいいんだ?」

「……会わない方がいいよ」


ここに来て、未練がましいことは言いたくなかった。

せっかくの決心を無駄にするようなことも、したくなかった。


……だから、あえて町名のみ。そこから先は告げないまま。


「でも……こんな重いヤツでも、それでも会いたいって思ってくれるなら……あたしはこの町にいるから。ずっと、ここで頑張ってるから。だから……」


キラがあたしに会いに来てくれたように。
ソラの居場所を見つけてくれたように。

あたしが、ソラに会いに行ったように。


もしもあたしを必要としてくれるんだったら、今度はソラの番──



「……あたしを探して?」



ソラが大きなため息を吐いた。

「そんなの、無茶だよ」

「そうだね。……だからこれでお別れ。元気でね、ソラ」





「荷物は以上ですかー?」

背後から、手際よくダンボールを運び出してくれていた引っ越し業者に声をかけられる。

振り返ると部屋は、4年前にここへやってきた時同様に、何もなくなっていた。


がらんとした部屋を見回して、こんなに広かったんだ……なんて改めて思いながら。

「はい、これでオシマイです」

そう言うと、あたしはそのまま携帯の終話ボタンを押した。


……頑張ろう。


携帯を閉じると、

あたしは部屋に1つだけぽつんと残されていたカバンを持って、部屋を後にした。