「twin star」から……ううん、ソラから逃げるように。
早足で駅に向かいながら、あたしはずっと考えていた。
こんなとき、もしもドラマやマンガだったら、失われた記憶が戻るんだろうな……って。
キラの家の書斎で読んだマンガのなかには、サッカーボールが頭に当たったはずみで記憶が戻る、なんていうストーリーもあった。
──だけど、現実には、そんな奇跡は起こらない。
ソラはあたしとスケッチブックの絵を見比べて、まるでドラマのワンシーンみたいに、頭を抱えて『何か思い出せそうなのに、あともう少し……』なんて苦しむこともなく。
あたしがソラの前で泣いて『これはあたしだよ!』って訴えたって、
ソラはただ困っただけで、
悲しそうな顔をしただけで。
「ばっかみたい……」
……あたし、何を期待していたんだろう?
ソラが探し求めているのはあの頃のあたし。
決して今のあたしじゃない。
あたしはまた、“ソラに片想い”に逆戻りだ。
「イヤだな……。キラの次は、昔のあたしがライバルなんて」
そんなあたしにはもう、涙を流す気力すら残っていなかった。


