「奥さん、待って……!」
ソラが口を挟もうとすると、奥さんは「ソラは黙ってて!」ってそれを遮って。
そして再び、涙混じりの声であたしに言った。
「きついことを言うって思うかも知れない。だけど、これは美夕ちゃんのためでもあるの。……お願いだからあなたも現実を受け入れて、前を向いて生きて?」
旦那さんはカウンターの奥で、目を閉じたまま腕を組んでいた。
俯くと床には、あたしがソラに掴みかかったときに落ちたスケッチブック。
……絵のあたしが、泣きながらこっちを見ていた。
まるで「もうやめて」って言ってるみたいに。
「……だったら、こんなスケッチブックのことも知りたくなかった」
「それは、記憶を失っても美夕ちゃんはちゃんとソラの心の中にいるんだって、前向きに考えて欲しくて──」
「もういい!」
泣きすぎて「ヒクッ」ってしゃくりあげながら顔を上げると、そこには悲しそうな目をしたソラがいた。
「……苦しんだのはソラだけじゃない。あたしだって、キラだって……苦しくて……いっぱい泣いたんだよ?」
だけど、ソラは何か言いたそうに口を半開きにしただけで、何も言ってはくれない──
「あたしだって……こんな辛い思いばかりで……ソラのことなんて忘れたかったんだから!」
そんな思ってもない言葉を吐き捨てると、
あたしは旦那さんと奥さんに向かって深く一礼をして、「twin star」を飛び出した。
ソラが口を挟もうとすると、奥さんは「ソラは黙ってて!」ってそれを遮って。
そして再び、涙混じりの声であたしに言った。
「きついことを言うって思うかも知れない。だけど、これは美夕ちゃんのためでもあるの。……お願いだからあなたも現実を受け入れて、前を向いて生きて?」
旦那さんはカウンターの奥で、目を閉じたまま腕を組んでいた。
俯くと床には、あたしがソラに掴みかかったときに落ちたスケッチブック。
……絵のあたしが、泣きながらこっちを見ていた。
まるで「もうやめて」って言ってるみたいに。
「……だったら、こんなスケッチブックのことも知りたくなかった」
「それは、記憶を失っても美夕ちゃんはちゃんとソラの心の中にいるんだって、前向きに考えて欲しくて──」
「もういい!」
泣きすぎて「ヒクッ」ってしゃくりあげながら顔を上げると、そこには悲しそうな目をしたソラがいた。
「……苦しんだのはソラだけじゃない。あたしだって、キラだって……苦しくて……いっぱい泣いたんだよ?」
だけど、ソラは何か言いたそうに口を半開きにしただけで、何も言ってはくれない──
「あたしだって……こんな辛い思いばかりで……ソラのことなんて忘れたかったんだから!」
そんな思ってもない言葉を吐き捨てると、
あたしは旦那さんと奥さんに向かって深く一礼をして、「twin star」を飛び出した。


