──あたしが、いつも、笑っている……?
体を支えていた力を失って、あたしは思わずカウンターに両手を突いた。
緊張の糸が切れるときって、大きな衝撃があるわけじゃない。
ただフッと、体の力が抜ける感じなんだ──。
強ばっていた頬まで緩んで、そんなつもりはないのに失笑が漏れる。
「あたしだって、笑いたくて笑ってるんじゃないよ……」
その次にあたしを襲ったのは、体の奥からこみ上げてくる感情だった。
怒り?
悲しみ?
……違う。
それは、悔しさだった。
今まで我慢していた涙が一気に溢れ出て、自分でもそれをコントロールできない。
「……分からないの? これ、あたしだよ? 思い出してよ!」
気がつくと、あたしはソラにつかみかかっていた。
お客さんのひいた店内。
空いたテーブルを拭いて回っていた奥さんが駆け寄ってきて、あたしを後ろから羽交い締めにした。
「美夕ちゃん、落ち着いて!」
「どうして……どうして気付いてくれないの? あたしたちのこと忘れるなんて、ヒドイよソラ!」
……やっと会えたのに。
……やっと、やっと、キラが許してくれたのに。
それなのに、どうして──!


