ソラと会うたびに、あたしはドキッとして、そして期待してしまう。

もしかしたら、今日こそはあたしのことを思い出してくれるんじゃないか……って。


でも、現実はそんなに都合良くはいかない。


「美夕はうちのお得意様なんだから、しっかり挨拶しとかないとね」

ソラから聞かされるのは、そんな寂しい台詞ばかりだった。



あたしは、いつまでたっても「お客さん」で。

ソラの記憶が戻ることはないままで。



ソラは、お店が落ち着いている時はいつもカウンター席に座っている。

それはいつだって、ひとつ椅子を挟んだ、あたしの隣の隣の席。

ソラは決してあたしの隣に座ろうとはしなかった。



……3ヶ月経っても、ソラとあたしの距離はいっこうに縮まらない。



長くて寒い冬。

「twin star」へ通い続けて、早いものでもう3ヶ月──。


その間にあたしは大学の卒業式を迎え、気がつけばもう3月が終わろうとしていた。