ウソ★スキ

「おい、そろそろ店に戻るぞ」

彼に促されると、キラは「そうだね」って素直に車から離れた。


そして、あたしの方に向き直ると、

「じゃあ、今度こそ本当に行くから」

口をきゅっと結んで、その口角をあげて。

キラはサバサバした表情でそう言った。



だけど。

あたしは慌てて、再度キラを引き留めた。

「待って、キラ!」

「今度はなに?」

キラはもう、立ち止まろうとしない。

早足で助手席側に回り込むと、車のドアに手をかけた。


「キラ、携帯変えたんだよね?……番号教えて!」


だけど、キラは笑みを浮かべたまま何も語ろうとしなかった。


……もしかして、迷惑なの?

そんな不安が頭をよぎったけれど、だけどあたしもここで諦めるわけにはいかない。


「また会いたくなるかも知れないし。……っていうか、間違いなく、会いたくなると思うし……」


キラは黙ったまま、あたしに背中を向けて助手席のドアを開けた。