ウソ★スキ

「だけどある晩、私は親のお店に顔を出した後、アイツに送ってもらうことになったの」


……真面目な彼なら、絶対に送り狼にはならない。

両親はそう信じ切っていたらしくて、当時まだ雇ったばかりの彼にキラの送迎を頼んでいたという。


いつものように玄関先まで彼に送り届けてもらうと、キラは言った。


「1人じゃ怖いの、一晩一緒にいて?」


毎晩1人で怯えながら朝を待つ生活にも限界が近づいていた。

だからキラは、彼と『万が一』のことが起きても1人で寝るよりましだと思って、

そこまで覚悟をして、

彼を引きとめた。


──だけど。


「何だ、それ」

彼は、キラが強く握っていた腕を力いっぱいふりほどくと靴を脱いで家にあがり、リビングのソファにどっかと座り込んだ。

「馬鹿な事を言うな」

「だって鬼が出るのよ! お願いだから2階の私の部屋に来て。眠るまででいいからそばにいて!?」

キラが泣きながらそう訴えても彼はその場から動こうとせず、更にキラを突き放して。


「いいから、1人で寝ろ」

「だけど……」

「鬼なんているわけないだろ。それに、今夜もしお前の眠りを妨げるようなヤツが来たとしたら、その時は俺がここで追い返してやる。お前の部屋には絶対に上げない。だから俺を信じて、とっとと寝ろ」

それだけ言うと、彼は腕を組んで目を閉じてしまったらしい。

眉間に深いシワを寄せながら……