──だけど、そんな感動の別れからほんの10分後。
あたしは再び先輩と電話で話をしなければならなかった。
「もう……先輩ってば信じられない!」
「ごめんごめん。美夕ちゃんを起こしたらまずいと思って、暗い部屋の中をこっそり出てきたから」
上着も、カバンも。
『また来るかも知れないから』って言ってずっとうちに置きっぱなしにしていた、苑ちゃんにもらったお土産のマグカップまで。
思い出だけを残して、全ての気配を持ち帰ったはずの先輩がたったひとつ忘れ物をしていたのだ。
それは、一番忘れてはいけない、結婚式場のロゴが入った青い封筒だった。
「それで……この封筒、どうしたらいいんですか?」
「うーん。どうしよう……」
その封筒に気付いて電話をかけたとき、先輩は既に電車に乗った後だった。
今年、あたしよりも一足早く社会人になっていた先輩は、これから家に戻って大急ぎで着替えをして、またすぐに出勤しなければいけないだろうから、
「今からここまで取りに戻って!」
なんて言うわけにはいかない。
あたしは再び先輩と電話で話をしなければならなかった。
「もう……先輩ってば信じられない!」
「ごめんごめん。美夕ちゃんを起こしたらまずいと思って、暗い部屋の中をこっそり出てきたから」
上着も、カバンも。
『また来るかも知れないから』って言ってずっとうちに置きっぱなしにしていた、苑ちゃんにもらったお土産のマグカップまで。
思い出だけを残して、全ての気配を持ち帰ったはずの先輩がたったひとつ忘れ物をしていたのだ。
それは、一番忘れてはいけない、結婚式場のロゴが入った青い封筒だった。
「それで……この封筒、どうしたらいいんですか?」
「うーん。どうしよう……」
その封筒に気付いて電話をかけたとき、先輩は既に電車に乗った後だった。
今年、あたしよりも一足早く社会人になっていた先輩は、これから家に戻って大急ぎで着替えをして、またすぐに出勤しなければいけないだろうから、
「今からここまで取りに戻って!」
なんて言うわけにはいかない。