ウソ★スキ

そう言うと、先輩はもう一度あたしを強く、だけど優しく抱きしめてくれた。


先輩の背中ごしに空を見上げると、そこにはぼんやりと弱々しい光を放つ月が浮かんでいた。


いつだっただろう……

キラに仕組まれて、
2人が抱き合ってる声を聞かされて、
キラには絶対かなわないって思い知らされてこの場所で1人泣いたのは。

なんだかずいぶん昔の事みたいだけど、でも、あのときのことは鮮明に覚えている。

あのとき、あたしが書斎で読んでいたマンガは確か、恋に落ちた双子が誰も知らない遠くの町に逃げて、そこで幸せになるハッピーエンドだった。


「本当に、終わっちゃった……」


あのとき、この場所で泣きながら見上げたのは、眩しいくらい明るい満月だった。

それなのに、今日の月は欠けていて、薄雲に覆われたその輪郭はおぼろげで。


そして、あたしの心は、あのときよりもずっとずっと苦しかった。


「でも、一度でいいから言いたかったな……」


ソラに、『好き』って。

好きな人に、面と向かって、心を込めて『大好き』って。


そんな簡単な言葉が、どうして言えなかったんだろう──