ウソ★スキ

「ううん! あたし、負けたんです。あの2人が並んでいるところを見て、やっぱりお似合いだなんて思ったもの……」


先輩は立ち上がると、黙ってあたしを抱き寄せた。


「あたし、意気地なしだから……」

「そんなことは、絶対にない」


先輩の胸は温かかった。

昼間に感じた背中よりも、もっともっと、温かかった。


「先輩……あたしね、ソラに一度も『好き』って言えなかったんです。こんなに好きなのに、一度も……」

「……うん」


先輩は、あたしが何か言うたびに優しく相づちを打って、そしてぎゅっとあたしを抱きしめてくれた。


「あたしの気持ち、ちゃんとソラに伝わってたかな……」

「……伝わったよ」

「でも、キラに負けた……土壇場になって怖じ気づいて逃げたんだって……思われてないかな……」

「そんなことない」


見上げると、先輩の頬には一筋の涙が伝っていた。


「こんなに美夕ちゃんは頑張ったんだ。ソラも分かってるよ」

「でも……」

「美夕ちゃんは、ソラのことが好きだから、ソラを苦しませたくないから、だから『バイバイ』って言ってあげたんでしょ? それって勇気がいることだよ」

「先輩……」

「……美夕ちゃんは、強いよ。好きな男のために、精一杯頑張ったんだ。それが伝わらないわけないじゃないか」