ウソ★スキ

先輩はしばらく顔を隠したまま肩を震わせていた。


あたしは、先輩の柔らかな髪にそっと触れた。

どうしてだか分からないけど、先輩が泣いているような気がして……。



「駅に、キラが来たんです」

「……うん」

「キラは驚くくらいボロボロで、やせ細ってて……。だから、キラには本当にソラが必要で……あたし、そんなキラを残して、自分だけソラと行けなかった……」

「……うん」

「もしあそこでキラを置いていったら、ソラのことを嫌いになりそうで……そんなことしても、あたしたち、絶対うまくいかないって……」


キラを見捨てられない──

あのとき、きっとソラも同じことを思っていたんだろう。

どうしていいか分からずに泣きそうな顔をしたソラの顔が、頭から離れてくれなかった。


「……結局あたし、こんな目にあっても、キラのことが好きみたい……」

「うん」

「それに、駆け落ちなんて大それたこと……土壇場になって、怖じ気づいたのかも」

「そんなことはないよ」


先輩が、ようやく顔を上げた。


「美夕ちゃんはソラを選んだんだ。そのことは、俺がよく知ってる」