先輩に嘘はつけない。

「ソラと、誰も知らないところへ……」

あたしは、先輩に昨夜の出来事を正直に話した。



「信じられない」

慌ててヘルメットを脱ぎながらあたしの話を聞いていた先輩は、自分の髪をぐしゃぐしゃとかきながらそう呟いて。

「ちょっと待って……。それって、もうここには戻って来ないってこと?」

その質問に、あたしは黙ったまま大きく頷いた。

「……学校はどうする気? 美夕ちゃんまで辞めるつもり?」

「はい……」

「2人でどうやって生活するの? 保証人になってくれる人がいないと住むところだって見つからないよ?」

先輩の手が、あたしのカバンに伸びる。

「よく考えたら分かるだろ。こんなの無理に決まってるのに……2人とも、一体何を考えてるんだよ……」

あたしはカバンを奪われまいと、両手で必死にカバンの取っ手を握りしめた。


「お願い、先輩。お願いだから、行かせて……」