ウソ★スキ

翌日の朝は、いつも通りやってきた。


あたしは怪しまれないように、制服を着て、カバンを持って、いつも通りママに挨拶をした。

「行ってきまーす」

「ご飯は?」

「昨日の夜食べ過ぎたからいらない。ママのあのおにぎり、大きすぎるんだって」

「そんなことないわよ。それで、ちゃんと歯は磨いたの?」

「磨きました!」

ママとそんな会話を交わすと、あたしは足早に家を出た。


ママは今日の午後、フラワーアレンジメントだったかお茶だったか、とにかく何かのお稽古ごとで外出して、帰ってくるのは夕方遅くなってから。

それを知っているあたしは、さっきの会話が最後になることを分かっていたから、早くママの前から立ち去りたかった。

……そうでないと、泣いちゃいそうだった。


あたしは家を出ると駅で私服に着替えて、外で時間をつぶした。

学校には自分で「具合が悪いから休む」って連絡を入れておいた。


そうして、家に戻ったのはお昼過ぎ。

ママは出かけたあとで、家には誰もいなかった。


あたしはカバンに詰め込んでいた、もう着ることのない制服を取り出すと、丁寧に埃なんて払いながら、シワを伸ばしながら、それをハンガーに掛けた。

そして、押し入れに隠していたカバンを取り出すと、大きな深呼吸をしてから自分の部屋を出た。