──そして昨日の夜。

あと少しで日付が変わるという頃になって、ようやくソラから電話があった。


「キラが部屋から出てこないんだ」

開口一番、そう言ったソラの声は暗かった。

「……呼んでも、返事もしやしない」


ソラが困り果てたって感じのため息をつく。


「明日の朝、学校に行くまでに機嫌を直してくれるといいんだけどな」

「うん……そうだね……」


あたしも、旅行から帰ってから、何度もキラの携帯を鳴らしていた。

月曜の朝まで待てない。少しでも早く、キラと話がしたくて──


だけど、キラは一度も電話に出てくれなかった。



「こうなったら持久戦だな。出てくる気になるまで、部屋の前で待つか……」



あたしは、廊下に座り込んでキラを待つソラの姿を思い浮かべた。


広い家に朝まで2人っきりのキラとソラ。

今夜、もしもキラが部屋から出てきて「夜が怖い」って泣いたら、ソラはどうするんだろう……。


そんなことを考えていたから、

「……今夜も、キラと一緒に寝るの?」

無意識のうちに、そんな言葉が口から出てしまった。