「だけど皮肉なことに、俺たちがそうやって深みにはまればはまるほど、キラの状態は良くなっていったんだ」


キラは、ソラに抱かれた後は、再び泣くことなく落ち着いて眠ることが出来た。

キラが夜を怖がらずに済む……

ソラは、そのことが何よりも嬉しくて、

「このまま2人で地獄に堕ちてもいい」

キラの寝息を横で聞きながら、何度もそう思ったという……。


「そんなことでキラを守った気になって……俺もかなり歪んでたよな」

それはきっと、あたしに問いかけた言葉。

だけど、あたしは何も言い返すことができなかった。



「俺のこと、嫌になった?」

「……ううん、そんなことない」


そんなんじゃ、ない。

生々しい話を聞かされても、不思議と「嫌だ」という気持ちにはなれなくて。

ただ、ただ、胸が苦しいだけで。



だけど、あたしはソラに「歪んでないよ」って言ってあげることができなかった。

だからと言って、ソラを慰めるために「でも、そうするしかなかったんだよね」なんて軽々しい言葉をかけるような真似は、もっとしたくなくて。


今、部外者のあたしが何を言っても、薄っぺらくて何の意味も持たない言葉にしかならない。

……そんな気がした。




だからあたしは、返事をする代わりに別の質問を投げかけた。


「今は……夜、どうしてるの?」