「美夕、やっぱり知らなかったんだ?」

「うん……」

「キラは、夜1人じゃ眠れないんだよ」


──初耳だった。

だって、今まで何度も夏のキャンプや修学旅行で一緒に夜を過ごしたし、

お互いの家に泊まりに行ったことだってあるのに。



あたし、何も気付かなかった。



小学生のころからずっと親友だと思っていたのに。

あたしの知っているキラは、いつも明るくて、自信に満ち溢れていて。

そんな弱い部分を持っていたなんて、思いもしなかった……。



「あたし、キラのことを本当に何も分かっていなかったんだ──」



あたしが落ち込んだのを察したのか、ソラが優しくフォローを入れてくれる。

「美夕が気にすることはないよ。キラはあの通り、自分の弱いところを人にさらけ出せないヤツだから。だからきっと、美夕の前では無理してたんだと思う」

「……うん」


ソラは神妙な口調で続けた。


「美夕に聞いて欲しいことがあるんだ。俺とキラの話……聞いてくれる?」



そして。


あたしが小さく「うん」と呟くと、

ソラは、あたしの知らないソラとキラの話を、ぽつりぽつりと語り始めた。



「夜になると、今でもキラは泣くんだ。『鬼が出る』って……」