ウソ★スキ

……やっぱり出直そう。

そう決めて、あたしがリビングを出ようとドアの方へ向きを変えると、後ろからソラが呟いた。

「そうだよな」

ひとつ、ため息をはさんで。

「もうガキじゃないんだよな、俺たち」


背中に、ソラがキッチンを出て、あたしの後ろを通り、リビングのソファに身体を埋める気配を感じる。

そうやってソラとの距離が少し近づいただけで、背筋がゾクゾクッとして、心臓の鼓動は早くなった。



……あたしの身体の全神経は、悔しいくらいソラの動きに集中していた。



「美夕も気がついたら、化粧して、大人びた香水なんかつけるようになって……」

「あの香水は、キラにもらっただけだよ」

「でも、似合ってた」

「……あたしは、もう、使わない」


そこで会話が途切れると、ソラからもあたしからも作り笑いが消えた……ような気がした。


「……先輩は?」

「部屋にいるよ」

「風呂は?」

「……わかんない」


あのね、ソラ。
あたし、先輩と別の部屋に泊まるんだよ?



……どうしてだろう。

あたしは、どうしても、そのことをソラに言い出せなかった。