ウソ★スキ

「風呂上がりって、なんかいいよな。そそられる」

「そういうこと言わないで。すっぴんもパジャマも、見られたくないんだから」

「なんだそれ。美夕のことならガキの頃から知ってるのに」


そんな、ぎこちない会話が続く。


ソラはカウンターに手を伸ばしてグラスを取ると、水で簡単にすすぎ、目線の高さにある吊り下げ式のグラスラックにしまった。


「それでも、見られたくないの。……いつまでも子供のままじゃないんだから」


すっぴんを見られるのは恥ずかしい。

だけど今は、それ以上に、泣きすぎてすっかり腫れ上がった目を見られたくなかった。


本当はこの目を氷で冷やしたかったのに、今、ソラの前を通って冷凍庫を開けるわけにはいかない。


──どうしよう。



しばらく、あたしたちの間には沈黙が続いた。