「もういいよ」



先輩の手が、泣きじゃくるあたしの肩に触れる。

そして次の瞬間、あたしはそのまま先輩の胸に引き寄せられていた。


「もう、何も言わなくていいから」


あたしは先輩に抱き締められていた。

それは、今までずっとあたしを守ってきてくれた、大きくて温かい胸だった。



「いっぱい泣いて、落ち着いたら、隣の部屋に荷物を運ぼう。今日はひとりでゆっくり寝たほうがいい」


耳元で優しくそう囁く先輩の身体は震えていた。



あたしは、先輩の背中に手を回すと、その身体にしがみついた。

そして、先輩の服がしわくちゃになるくらい、強くぎゅっと握り締めて。



あたしはいつまでも、先輩の胸で声を上げて泣き続けた。