「今、ソラは頑張ってるんだー」


静かな口調で。
穏やかな表情で。


「美夕が幸せになるんならって、美夕のこと、必死にあきらめようとしているの。……大丈夫よ、ソラのことは私がちゃーんと支えるから。だから美夕はもう余計なことをしないで?」


キラの目は確かにあたしに向けられているはずなのに、決してその視線はあたしのそれとは交わらない。


「明日の朝になったら、きっとみんな笑ってる。だから、ね──」


キラは、どこか遠くを見ていた。


だけど、あたしには分からない。

キラの視線の先に、一体なにが見えているのかなんて……



「美夕は、おとなしく先輩に抱かれればいいのよ」



一筋の涙があたしの頬に伝った。


「だから、これはおまじない。あたしと美夕がこれからもずっと親友でいられますように。ソラが私だけのソラに戻ってくれますように──」


そう言うとキラは、ナイフの先端を更に自分の喉元に押し当てた。




狂ってる。

目の前にいるあたしの親友は、狂ってる──。