ぎゅっと唇をかみ締めた後、あたしは再び口を開く。

「昨日の電話は……なんだったの?」

「ああ、あれ?」

キラは相変わらず饒舌だった。

「この旅行中に、こっそり2人で会う計画でも立ててるんじゃないかと思ってね。ソラがお風呂に入ってる間に、携帯を盗み見たの」

「そんなことしないよ!」

「みたいだね。証拠はなーんにも残ってなかった。……だけど、胸騒ぎがしたの。女のカンってやつ。だからソラのふりをして、美夕に電話をかけたんだ」

「……考えすぎだよ」

「旅行についてはね。だけどおかげで、面白いこと聞いちゃった」



──あの時、あたし、何を話したんだっけ?

つい昨日のことだっていうのに、頭がうまく回らなくて思い出せない。


「バスで無視したって何? ソラが『おいで』って言ったって、どういうこと?」


……そうだ。
……そうだった。


キラに言われて、あたしはやっとあのときの会話を思い出した。


「私の知らないところで、美夕ってば随分楽しくやってたんだね。……先輩とうまくやってると思ってたのに。これじゃ、苑ちゃんに見張らせてた意味がないじゃない」


あぁ、もう。

キラから、次々に信じられない言葉が発せられる。


なんだか気分が悪い。吐き気もしてきた。

あたしは立っていられなくなって、ずるずるとその場に座り込んでしまった。