それからしばらくして、あたしはトイレの個室のドアを開けた。


入り口のドアは、開いたままだった。




ゆっくりとトイレを出て、辺りを見回したけれど、とっくにソラの姿はなくて。

その代わり、あたしの目線のその先には、お土産を眺める先輩の姿があった。






──あたし、もう、ダメだ。

自分の気持ちを隠していられない。









あれは、アラビアンナイトだったかな?

「開け、ゴマ」

そんな簡単な言葉一つで、

どんなに力を加えても開かなかった頑丈で重い洞窟の扉が、

いとも簡単に開いてしまったように──。




あたしが今まで何年も、必死に押し殺してきた気持ち。

もう大丈夫だと思って、心の奥深くに封印したはずのソラへの想い。






魔法の呪文は、ソラが最後に小さく呟いた、言葉ひとつ。



「好きだ」



──心の扉が、今、開いた。