ソラの手があたしの肩から離れていった。


「分かった。先輩には俺からちゃんと説明しとくから安心して。あの時は俺が無理矢理美夕を引き止めただけで、美夕は何も悪くないんだから」


「……え?」


あたしは、顔を上げてソラを見つめた。

ソラは、やっぱり穏やかで、落ち着ききった表情をしていた。



「さっきは変な態度とって、ごめんな。これからはもう美夕に迷惑かけないから。だからもう、泣かないで」




「……どういうこと?」






「俺、潔く美夕のことあきらめるよ」






その言葉に、体中の血液が一気に頭に上ってきた。


そして次の瞬間、あたしは両手をソラの胸に押し当てると、ソラの体を思い切り突き飛ばしていた。

その勢いで、ソラの体がドンという鈍い音とともにトイレの個室ドアにぶつかる。




「からかわないでよ!」




そしてまた、あたしの頬を涙が伝った。