ソラがあたしの両肩を抱いて、ゆっくりと自分の体から引き離したのは、それからしばらく経ったあとだった。


「先輩と、喧嘩でもした?」

あたしの肩を抱いたまま、姿勢を低くしてあたしの顔を覗き込むソラ。

あたしは俯いたまま、首を横に振った。



「だったら……もしかして、俺のせい?」



今度は小さく頷くあたし。



「でも、ソラのせいだけじゃないよ? ……昨日の夜から、なんだかいろいろありすぎて……」


そう。もちろん、ソラのせいだけではない。


だけど、今日のソラはどこかおかしくて。

そんなソラに緊張感を持っていたのは本当のことだった。




「それとね……先輩、あたしたちがバスで会ったことを苑ちゃんから聞いたみたい……」


頭上から、ソラのため息が聞こえてくる。


「苑ちゃん、あたしをソラに取られちゃうよって、先輩に言ったみたいで」

「それを、先輩に責められたの?」

「ううん……ただ、『信じてるから』って」

「そうか……」