ここは全国屈指の避暑地。

一歩足を伸ばせば、そこは自然豊かな高原だった。

だけど、駅周辺はかなり観光開発が進み、辺りの緑美しい景色とは不釣合いなくらい賑やかだ。

コンクリートがむきだしになった駅を一歩出ると、古くからあるこじんまりしたお土産店が近代的な商業ビルに挟まれて肩身狭そうに散在していて……なんだか、寂しげに見える。


観光シーズンというわけでもない今の季節だけど、そんな町並みを行き交う観光客は予想以上に多かった。



だけど……

「……あーあ、タイミング悪いな。1時間も待ち時間があるよ」

次に乗るバスの時刻表と腕時計を交互に見比べながら、そう呟いたのは先輩。


オフシーズンの今、ペンションへ向かうバスの本数は通常よりぐっと少なくなっていた。


「でも、これだけお店があれば1時間くらい楽につぶせると思いますよ? 駅ビルにおいしいカフェもあるみたいだし」

あたしも、車内で読んだ雑誌で仕入れた情報で話に参加する。


「そうだね……だったら、バスの時間まで別行動にしようか?」


先輩は、キラとソラの顔を見ながら、意味ありげに笑った。