先輩は、公園の前……いつもの場所にいた。

「せんぱいっ!」

そう呼びながら、あたしは急いで先輩のもとへ走った。

だけど、先輩の目の前までいくと、あたしの足は止まってしまった。


……なんとなく、先輩と目を合わせるのが恥ずかしい。


いつもと違う、見慣れない私服姿だから?

それとも、今夜のことを考えちゃうから?


あたしが意識しすぎなのかな……?


だけど、原チャリにもたれかかっていた先輩は、あたしの姿を見るとなぜか大笑いを始めた。


……え?


「……先輩? あたし、何かおかしい?」

あたしが恐る恐る聞くと、先輩はあたしの頭を撫でながら

「笑ってごめん! 女の子って本当に荷物が多いなーと思って。大変だね」

そう言って、あたしが抱えているバッグを指差した。


「あ……」


確かに、それは一泊旅行にしては大きなボストンバッグ。

しかも中に荷物がパンパンに詰まっているのが、外からでも分かるくらいで。