「それと、本当にお金は要らないの? キラちゃんに聞いてくれた?」

心配そうに聞いてくるママ。


「……聞いたけど、いらないんだって」

「でも、食事だって出してもらうんでしょ? 管理人さんもいるっていうし……」

「いいみたいだよ? 良く分かんないけどキラは『会社のケイヒで落ちるからいい』って言ってた」


ママは『会社のケイヒ』って言葉を聞いた途端、安心した顔になった。

「そうだったの……。じゃあ、早く準備を済ませてお風呂に入っちゃいなさいね」

ふーん。
それなら、いいんだ……。



ママが部屋を出て行くと、あたしは再び荷造りを続けた。



──私はひとつだけ、ママにウソをついていた。


ママを安心させたくて「管理人さんが住み込みで面倒を見てくれる」って説明したけど、

実は、管理人さんはペンションから少し離れたところに住んでいて、ただ朝晩の食事を運んでくれるだけなんだ……。


だけどそうでも言わないと、ママは『子供だけ』で外泊するなんて許してくれそうになかったから。


──ゴメンね、ママ。