先輩は少し照れくさそうな顔をしていた。
「まだ美夕ちゃんが小学生だった頃、よくうちに来て苑とピアノを弾いてただろ?」
「……はい」
「ある日ね、自分の部屋にいたら、リビングからいつも聴いてるのとは違うピアノの音が聴こえてきたんだ」
当時のことは、よく覚えている。
苑ちゃんと先輩の家のリビングには大きなグランドピアノがあって、
あたしとキラはよくそのピアノを弾かせてもらっていたんだ。
「苑のピアノはなんていうか、良くも悪くも正確で、生真面目な苑の性格がそのまま出ていたんだけど……その時聴いた音は、それとは全然違って、めちゃくちゃだったんだ。間違えてばっかりだし、早くなったり遅くなったりするし」
……それってどう考えてもあたしの演奏のことだ。
あまりの恥ずかしさに、あたしの顔は一気にかあっと赤くなっていった。
「だけど、すごく楽しそうに聴こえたんだ。間違えて、そのたびに元に戻って弾き直すんだけど、それでも楽しそうで」
「まだ美夕ちゃんが小学生だった頃、よくうちに来て苑とピアノを弾いてただろ?」
「……はい」
「ある日ね、自分の部屋にいたら、リビングからいつも聴いてるのとは違うピアノの音が聴こえてきたんだ」
当時のことは、よく覚えている。
苑ちゃんと先輩の家のリビングには大きなグランドピアノがあって、
あたしとキラはよくそのピアノを弾かせてもらっていたんだ。
「苑のピアノはなんていうか、良くも悪くも正確で、生真面目な苑の性格がそのまま出ていたんだけど……その時聴いた音は、それとは全然違って、めちゃくちゃだったんだ。間違えてばっかりだし、早くなったり遅くなったりするし」
……それってどう考えてもあたしの演奏のことだ。
あまりの恥ずかしさに、あたしの顔は一気にかあっと赤くなっていった。
「だけど、すごく楽しそうに聴こえたんだ。間違えて、そのたびに元に戻って弾き直すんだけど、それでも楽しそうで」


