「せんぱいっ!」

そう叫びながらあたしが先輩のもとへ駆けつけると、

先輩は一瞬笑ってくれたあと、すぐにその表情を心配そうなものに変えた。

「美夕ちゃん、もう大丈夫?」

「……はいっ。ずいぶん待ってもらったんじゃないですか?」

本当は、いきなり走ったせいで少し苦しいんだけど。

先輩にこれ以上心配をかけたくなかった。


「大丈夫だよ、美夕ちゃんを待つのなんて、全然苦にならない」

そう言って、先輩は優しく微笑んでくれた。


「よかった……。美夕ちゃんが元気かどうか心配だったけど、女子高の中に入って美夕ちゃんを探すわけにもいかなくて、ここでヤキモキしてたんだよ」

先輩があたしの顔にそっと触れる。

それはいつものように、壊れ物を扱うように、とても優しく。

その手はとても温かかった。


「でも、まだちょっと顔色が悪いみたいだ。無理しないようにね」

先輩は、

「原チャリ2ケツはきついかな?バスで帰る?」

って、ほんとにあたしのことを心配してくれて。


そんな先輩の優しさに、

あたしは泣きそうになった。



だって、あたし。

先輩にそんな風に心配してもらえるような、いい彼女じゃないのに……