「……帰る」


ソラがあたしに背中を向ける。

そして、ピシャッ、パシャって水の跳ねる音をたてながら歩き、

一歩、また一歩とあたしから遠ざかっていく。


そんな足音が、あたしの耳と胸に響いてきた。



「……それと」


ソラが立ち止まって、あたしに言う。



「明日からも、また、今までと同じ態度とるから。気ぃ悪くしないで」

「……どうして?」



なんだか、嫌な予感がした。

あたし達の間の重い空気は、更に重くなっていく。




ソラは、あたしに背中を向けたまま、言った。



「多分、キラは全部気づいてる」



そして、最後にもう一言。

それは苦しそうに、声を絞り出すように。



「俺はもう、キラの前で、美夕と友達のフリなんて出来ないんだ」





こうしてソラは、

そのまま、あたしの言葉を待たずに


キラの待つ家へと帰っていった…………