──しばしの沈黙。

しばらくして、そんな沈黙を破ったのは、ソラの方った。



「美夕はズルいよな」

「え?」

「俺をスキなのはウソだって言い張って、本気で俺と向かい合おうとしてくれないくせに。……そういう文句だけは言うんだ?」



ソラは、あたしの方をまっすぐに見つめて、続けた。



「俺は、今日、覚悟決めたけど。……美夕は違うんだろ?」




あたしは、

何も言えなかった。



それはあまりにも意外な言葉で。

あたしの頭では、それがどういう意味なのか理解できなくて。



ソラに「どういうこと?」って聞きたかったけど、

あたしの返事を待って真剣な表情をしているソラには

どうしてもそんなこと聞けなくて。



ソラは「……もういいよ」ってため息をついて、

身動きの出来ないあたしに横顔を向けた。

そして、一言。



「美夕には先輩がいるもんな」




その時、

あたしたちを照らしていた月は、

流れの速い、分厚い雲に、その姿をすっかり隠されてしまって、



あたりは再び闇に包まれた。




ソラ。

あなたは今、どんな表情をしているの?


あたしには、さっぱり分からないよ…………