マズい……。

先輩にばれちゃう……。


バスを降りていく苑ちゃんの背中を見送りながら、

あたしはとっさに、そんなことを考えてしまった。




「今の、苑ちゃん?」

バスが再び動き出すと、ソラがそう聞いてきた。

「うん……」

「懐かしいな、今、遠くの高校に通ってるんだっけ?」

「そうだよ」

あたしやキラと仲のよかった苑ちゃんのことは、ソラもよく知っていた。


もちろん、徹先輩の妹だってことも……。


「毎日通学すんの、大変だろうなー」


だけどソラは、まるで独り言のようにそう呟くと、

先輩のことには何も触れずに、


あたしの手を握ったまま、


また窓の外を見て黙り込んでしまった。




そして、バスはそのまま、

あたしたちだけを乗せて、



終点の車庫に到着してしまった…………